地域ブランディングは、オーダーメイドでしかありえない。

「人口減少×デザイン」。デザインって、建物を作ったり、ポスターを作ったりするときに必要なものじゃないの?というイメージがあると思うが、この本でのデザインの定義は、「複雑な問題の本質を一挙に捉え、そこに調和と秩序をもたらす行為。美と共感で多くの人に訴え、行動を喚起し、社会に幸せなムーブメントを起こす創造的行為」としている。

 この「複雑な問題の本質を捉える」というのが非常に重要。人は(自分も含め)、理解するために物事を単純化することがあるが、単純化したことによってそぎ落とされた部分に重要な要素が込められていて、結果的に間違った行動を取ってしまう、ということが往々にして起きうる。最近地方創生や自治体PR関連の本・ニュースを見ていて、失敗例とされているのは、ここを見極められなかったものなんだろうな、というものが多い。

・その地域での人口減少は、本当に悪いことなのか?
 (過密が解消される方が、一人あたりの幸福度は増すんじゃないか?)

・都市圏の出生率の低さを解消するには、保育園さえ作ればいいのか?
 (在宅で活躍できる環境を作る方が重要なんじゃない?)

・「何もないから、B級グルメを作ろう」ってなんで?
 (もっとよく見れば、外の人から見れば、資源があふれているんじゃない?)

それぞれの地域には、それぞれの可能性や課題がある。それを一緒くたに捉え、画一的な取り組みを国が押し付けたり、横で成功した事例をマネするようであれば、その結果は見えていると思う。やはり、その地域に合った取り組みというのが非常に重要。

最近自治体の取り組みを見ていて、すごく感じるのはこの「オーダーメイド」の重要性が極めて高いということ。自分たちのような外部からこのようなことに関わることのよさとして、「外からの視点が、内にいると気づかないチャンスを引き出す」ことが挙げられるが、逆にいうと「内にあるもの『すべて』を知り、チャンスのあるもの(本質)を明確に見出し、引き上げ、形にし、広げていく」ところまでやりきる必要がある。ということは、外部の人も関わる以上、「内の人」と同じくらいその内容にコミットし、同一レベルまで情報を仕入れていかなければならないのだ。

これってよくよく考えれば当たり前のことなんだけど、日々の忙しさと予算の状況にかまけて、そこまでやりきれているかというと、反省点は多い。特に予算の部分でいうと、自分たちが提供できるサービスの質に自信を持っていれば、自ずとそれに見合った対価をきちんと提示できるはずなのに、そこをうやむやにして「予算が少ないけど仕方ないからやる」みたいな感じになっちゃっているのは、こちらの問題だな・・・。

なんか本のレビューというより自分の反省文みたいになっちゃったけど、とにかく「表面的な課題に流されるのではなく、本質を捉え、その解決に向けてきちんとデザインすることを忘れずに取り組む」ことを学べたのでよしとしよう(この「本質をきちんと捉える」についてはもっと勉強しないとなーと感じているところ。また反省文になってしまった・・・)。