自治体の取り組みで重要なのは「ポジショニング」と「協働」。

 「地方創生」に関する本だが、基本的にはマーケティングの要素が詰まっている本。裏を返せば、いかに自治体の活動にマーケティングの要素が欠けているかをよく知ることができる。そして、世の中で見ることのできる「成功事例」がいかにこの要素をうまく活用したものであるかということも。自治体というある種特別に感じられる団体の活動ではあるが、基本の考え方は同じであるということだ。

この本の中で筆者は「ポジショニング」というマーケティング用語を用いて、弱者(地方)が勝負すべきは、強者(中央)が真似しないような軸を創り出し、そこで一番を目指す。それがいかに特定の消費行動に絞られようとも、そこにリスクを取って目立っていくべきだ、と述べている。

 

そうなんだよな。これは本当に重要。どんなに小さいと思えることでも、「その地域=●●」という認知度がきちんとなされれば、風穴を開けることができる。これをやって初めてどう広げるか、が重要なのだが、自治体はどうしてもこの「絞る」というところに慣れていない。というより「自治体は公平でなくてはならない」という意識が強すぎて、ある特定のジャンルや人に肩入れするという行動を極端に嫌がる傾向がある。

 そこでヒントになるのが、先日出た埼玉広報会議で学んだ「公平=目的ではない」という意識と、この本にある「協働」。まず、なぜその特定の要素に絞ることに決めたのか?それがその地域にどのような好影響を及ぼすと考えられるのか?それを徹底的に突き詰めて、論理的に返せるようになること。そこまでやって初めて「公平=目的」ではないことを伝えることができるようになる。

 

そしてそれを達成するためのコツが「協働」。密室で、特定の人が戦略を考え、それを「はいやりましょう」といって周囲に押し付けようとすると、いかに論理的であっても感情的に協力したくない、という気持ちが芽生えることだってある。この「分かっちゃいるけど、やりたくない」という雰囲気を作ってしまうと、お互いに相容れなくなり、せっかくのよいプランも立ち消えになってしまうことが多いだろう。

だからこその「協働」。リード役となる人がおおよその方針を考えつつ、住民やそこで働く人と一緒になりながら、楽しんで施策を考える。施策を考えた人はもはや「当事者」となり、その成功のために一生懸命動くはずだ。無策なままに色々な人の意見を聞き、逆にふわっとしたプランになってしまうのは言語道断だが、このステップの重要性は、自治体という組織ではより重要なものであることを再認識させられた。

 

 以下は、著書に書いてあったものからの抜粋。

★弱者の経営ノウハウ

 1.地域・企業の価値を市民・顧客と協働で発見して育てる
 2.弱者(地方・中小企業)は、強者が真似できない軸で1番を目指す。
 3.顧客層は時期・時間帯で変わる
 4.顧客に認められるようになる
 5.顧客の声を聞く=顧客の関心を知る
 6.表面化した1人の客の感動や苦情の背後には、同じような感動と苦情がある。
 7.これらのすべてにおいて、顧客・市民に目線を置く

 

★「協働」は、あらゆる業務の質を劇的に高める。そのコツとは

 1.遊び心を持つ
 2.当事者意識を持つ(自分の経験を生かす)
 3.枠組みを変える(例えば、位置づけ・目的や予算項目を変える・兼ねる)