ゆるキャラB級グルメとイベントの3つは、まちおこしではない」。

自治体関連のPRに携わっている者にとって、かなり衝撃的なメッセージである。なぜ、それが無駄であると言っているのか?その部分が、この本の重要なメッセージとなっている。

まずは地域と地域再生の定義を。 この本では地域を「中心となる都市と、その年に通勤・通学する人口が一定以上いる周辺地域を合わせたもの(おおよそ10万人以上の市の中心街とその通勤圏)」とし、再生の定義を「地域の平均所得が上がること」としている。

その定義の下で冒頭の3つの取り組みがなぜ効果を出していないのか?それは、地域を一つの会社と見たときに、「投資とリターンが設計されていないから」という。税金を投入して、一時的にお客さんを集めてはいるが、かけた以上に地元にお金が戻ってきていない。本来「活性化」を目指した事業というのは、自分たちが投じた資源よりも多くの資源が流入しなくてはならないが、B級グルメを目的に観光に来る人、その商品を買う人より、投入している税金の方が大きいことを問題視しているということだ。さらによくないのが、「経済効果」という指標で図っていること。経済効果というのは、以前から売上のあったものも効果として積み上げられていたり、効果があった一方でマイナス影響を受けたものを差し引くという視点がなかったりと課題の多い指標といわれている。だが、ある意味都合のいいこの表現に逃げてしまうということが頻繁に行われている現状が問題なのだ。

 

 うーん。難しい。一つの会社として地域を見る、ということはすごくよく分かる。会社として全体の戦略があり、それに沿って一つ一つの事業を定め、きちんとその役割をはたしているかの検証を行う。この動きは民間の自分にとっては当たり前の動きだし、それが自治体という単位で行われるべきだというのもすっと入ってくる。

問題は自治体の組織的なところが大きいんだろうなあ。全体戦略というより、インフラはインフラ、農水産は農水産、観光は観光でどうするか、ということを考え、その活性だけを考えて実行に移している。広報ひとつとってもそれは感じる。自分がPR会社として関わっていて一番疑問に思ったのが、観光の広報は観光のセクションが行い、広報セクションが関わっていないケースがあるという事実。本当は広報が全てのセクションの状況を捉え、何を優先して発信していくべきかをリードしなくてはいけないのに、それがなされていない。そうなってくると、その事業をサポートしている自分たちはその事業単体での効果を表現しなくてはいけないから、どうしても近視眼的な報告になりがちであり、自治体側もそれでよしとしている節があるんじゃないかな。

 

ここ最近先進的と言われている自治体は、この部分が変わってきている気がする。リード役である首長が、全体を俯瞰しながらプランを立てる。そして個々が「全体の中で果たすべき役割」を認識し(ここが重要!)、きちんと部署間連携して(ここも重要!)目標達成にまい進する。そうじゃないと、複雑に絡み合う最近のさまざまな課題には取り組めないと思う。

なんかちょっと自治体批判っぽく見える文章になっちゃったけど、自分たちも反省すべき点は多い。普通に観光の公示が出たとき、「その達成すべき内容」をどうするかだけ考えて、それができれば「非常によかった」という報告書を作っているわけだし。「今回行われるB級グルメをPRするために、イベントをやってほしい」という公示に手を挙げているか?挙げてるわ・・・。ある意味この片棒を担いでいると言ってもおかしくない。これからは公示が出たとき、真の目的は何かをきちんとヒアリングし、自分たちも理解していく努力が必要。せっかく取り組むからには、それを意味のある活動にしていく努力をしていかないとなー。がんばろう。